キャッシュレス大戦争と各々の思惑を考える
7Payがいい感じに話題になってるので、せっかくだし普段キャッシュレスについてツイートしたり考えたりしてることをまとめようと思います。あくまで個人的なまとめだけど普段これ関連でツイートするのもあれだしここにまとめておけば後々楽かなと思ったので。
大前提:ユーザがキャッシュレスに求めること
そもそもなぜキャッシュレスにするのか?これはおそらく至極単純で、利便性の向上という目的があるでしょう。現金と電子決済の機能の違いのうち、ユーザが嬉しいと思う機能ってこの辺りじゃないでしょうか
- 財布を出さずに素早く決済できること
- ポイントや割引がつくこと
- 家計簿連携などサードパーティアプリとの連携ができること
- 提供元サービスとの連携でシナジーが発生すること
- スマートフォンなどの端末に決済機能を持たせること
1.は当たり前で、例えばFelica(Suicaなど)であれば一瞬で決済が完了します。QR/バーコード決済はSuicaなどに比べれば遅いかもしれませんが、それでも現金決済よりは早いことは疑いないでしょう。クーポン使いまくるとそうでもないこともありますが。
2.について、今のところこの点で各種QRコード決済サービスが消耗戦をしています。キャンペーンに乗っかることで、様々な割引やポイントバックを受けることができ、現在でもそれがユーザをQRコード決済に引き止める大きな力になっていると感じられます。
現在松屋で有効なクーポン/還元/割引
— へいほぅ (@5ebec) July 1, 2019
- 50円引き雨クーポン(本日24時まで)
- ネギたま牛野S/おろし牛野菜S 50円引きクーポン(7/16 15:00まで)
- メルペイ 200ポイント還元(7/31まで 1度のみ)
- d払い 20%還元(7/31まで)
- PayPayランチ 10%還元(7/31までの11-14時)
- Origami 2-3%OFF(9/30まで)
松屋マスターのFFの人の情報によるとこんな感じらしいです。私はここまでやる気はありませんがすごいですね...
各サービスの還元率などを見てたら目が回ったので、具体的な還元率や特典などは各自で調べてください。
3.について、これは電子決済ならではの機能でしょう。情報サービスによって無理せず機能が追加されたいい例ですね。LINE家計簿やMoneyForward、ZaimなどにクレジットカードやFelica、QRコード決済を連携させることで自動で家計簿記帳を可能にしたり、各種カード会社のアプリから今月のクレジットカード利用額を見たりなど、ユーザにとって「あると便利」な機能を実現しています。
4.について。特にメルペイや楽天Pay、PayPayなどに顕著ですが、同じ会社のプラットフォームの別サービスと組み合わせることで割引だけでなくポイントの統合など、自分が使っているプラットフォームを「より使いやすく」できるのも電子決済の魅力でしょう。2.と被る点は非常に多いですが、割引以外にもいろいろサービスがあるので一応別枠で機能として挙げました。クレジットカードを銀行口座と一緒に作ることで時間外手数料をゼロにしたり、自動車会社のクレカでロードサービスや保険サービスを得たり、その他にもマイルを貯めたり変わったところではガソリンを少し安く買えたりと、これまでも様々な利便性をユーザに提供しています。
5.について。ここがQRコードとかFelicaのメインポイントなのでしょうが、スマートウォッチでSuicaを使ったり、スマホからPayPayを起動したりなど、決済機能をある程度スマホなど情報処理端末に集約することで無駄にかさばるカード類を減らすことができるというメリットがあります。バッグや財布の中を整理する(スマホに押し込む)という点でユーザにとって楽なのかもしれませんね。本質的な解決にはなってない気がするんですが...
他にもSuicaとかはチャージを経費に計上できたりするのでいろんな技があるのですが、ここでは割愛。
企業の思惑
ユーザ側から見ると様々なメリットがあると感じられますが、サービスを展開する企業側から見るとどのようなメリットがあるか整理しておきます。FelicaやQRコード決済はなぜここまで乱立しているのかを考える上で以下のメリットは非常に示唆的でしょう。
- 自社サービスに決済を組み込むことでよりサービスを使ってもらう
- 顧客の決済に関する情報をデータとしてかき集めることができる
- 自社の決済サービス網を広げることで加盟店手数料を取れる
- 他の決済サービスを利用されることによる手数料を減らせる
...まあ私が考え付く範囲だとこのくらいしかないんですが、重要な点はどれも既存のポイントカードやクレジットカードを自社で展開するメリットと類似しているという点です。いわゆる紙媒体でハンコを押していく形式のポイントカードではこれらの機能はありませんが、Tポイントカードや自社ブランドクレジットカードとやっていることは同じでしょう。現金では追跡できない顧客情報を古くからのPOSデータで、比較的最近ではポイントカードで追うなどの戦略や、決済手数料の負担を自社サービス決済にすることで減らすなどの戦略はかつてからあり、そこに昨今のビックデータブームとかお馬鹿政府のQR決済推進とかがあってここまで色んなサービスが乱立してしまったのでしょう。各会社が共同でプロジェクトを進めたがらないのは世の常なので...
ついでにFelicaの秘話についてはこの本が詳しいです。興味ある方はどうぞ。
フェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由
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なにはともあれ、結局新しく出てきたように見える決済機能は企業側から見ればあまり戦略としては変わらず、ただ流行に乗っているだけの話でしょう。正直、セキュリティインシデントみたいな炎上騒ぎ以外は企業関連だとあまり目新しいことはないです。データ漏洩もかつてTポイントとかやらかしてるし。
政府の思惑
最近のQR乱立で一番の黒幕は日本政府でしょう。政府がキャッシュレスを推進する理由として考えられるのは
- お金の流れを追跡することで税金の取りこぼしを減らす
- 造幣やATMなどのインフラコストを下げる
- いわゆる外国人観光客にとっての利便性向上
1. はマイナンバー制度にも同じことが言えるでしょう。また、マネーロンダリングに代表されるような、現金の追跡難度を利用した不正なお金の流れを減らすという意味でもこの政策の意味があるのだと思います。2.は意外と盲点ですが、造幣そのものの製造コストやATMの管理コスト、銀行などの警備コストは意外と馬鹿になりません。日本紙幣のような高度な透かし技術を乗せた紙幣の製造コストは上昇していくことは想像に難くないでしょうし、銀行には当然警備員が必要です。この辺りの社会インフラにかかるコストは(特に造幣など公的資金がかかっている部分には)可能なら減らすべきという圧力がかかるのは当然でしょう。1と2をある程度達成できるという点で「レスキャッシュ論」も話題になります(参考を見てください)。
3.については、観光による需要創出のアシストという面が大きいと思います。ただ、国内の人も戸惑うレベルの利便性じゃコケる可能性が高そうですね... 素直にSuicaを空港でデポジットすればええやんと思ったり。
技術に求められること
キャッシュレスの技術を実装しサービス化するのはほとんど私企業なので、今まで書いてきたことのうち、だいたいは企業の思惑が優先されてしまうのですが...
現金を取って代わるまでいかなくとも、最大公約数的に決済サービスに求められることってこのくらいじゃないですかね。
- 追跡が可能であること
- 情報のCIAが保たれていること
- 素早い決済が可能であること
- サービス連携が簡単であること
私見
お金とはすなわち交換手段ですが、歴史を見ても交換手段そのものが短期間で増えるという事態はなかったことでしょうし、種類が増えることによる弊害も多くあるでしょう。今後の方策とかは色々な議論を見ていくべきだと思っています。
利用者の私としては単純に早く決済できて自動記帳ができれば十分だと思ってます。Apple WatchのSuicaはいいぞ。
都会に住むからこそキャッシュレス生活を楽しめるわけですが(その点は認識すべきでしょう。柏キャンパスとかキャッシュレス難しいし)、今後都会の外に普及する可能性を考えると一足先に考えておく必要はあるのかなと思います。
ちなみにそもそも論なのですが、いくら割引されたとかどうとか、日常的に利用する場所でない限り買わないのが一番安いということを認識すべきだと思います。ポイントなどに踊らされる前に支出を見直した方が最終的な支出は減る気がします。
ビットコイン?あれは技術者と投機家のおもちゃですよ。
その他参考
ここら辺の記事や書籍が面白いです。